虹的なものであるということ

初音ミクの魅力は「現時点では」オタクにしか分からない

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もちろん、VOCAROIDとしての性能が優れていた――単純性能としての優劣で言えば従来作品と同等か、あるいはそれ以下なのかもしれませんが、初めてVOCAROIDというものに触れたユーザの想像していた性能よりも優れていた――ことは重要です。でも、ブレイクの発端として、まずキャラクターありきだったことは間違いない。そして、初音ミクというキャラクターは“オタク的”です。
(略)
それは、もし初音ミクのキャラクターイメージがもっと別なものであったら――と考えてみると分かる。もし初音ミク初音ミクじゃなくて、たとえばNHK教育の子供向け番組のキャラクターみたいなやつだったらどうだろう。「初音ミクはオタクっぽい」という話ではなくて、「初音ミクは子供っぽい」という話になっていたんじゃないだろうか。あるいは、初音ミクがまったく無機質なただのソフトウェアだったら、普通に単にすごいソフトウェアってことで静かに盛り上がっていたかも知れない。

初音ミクがここまで盛り上がった要因として、あのキャラクター設定があり、それが「ヲタク」受けしたから、ということがあることは否定できない。機械感をぬぐいきれない現状の技術で、音楽的な面だけでここまで耳目を集められたとは考えにくい。

-------- 虹絵、ひんぬうナイチチツインテール絶対領域、SFチック、16歳 ---------

どこまで狙っているのかしらないが、キャラデザの中の人はよくツボを抑えている。というかストライクすぐる。ここまでポイントをつかれたら、「ヲタク」の97%を占めるといわれているツインテールひんぬースキーな人々(出展:文部科学省「嗜好統計2006年版」)は反応せざるをえず、もう愛でるしかない。

が、逆に言えば「ヲタク」のストライクをついている、ということは「非ヲタ」 - ここでは「虹絵に対する耐性のない人、拒否反応を示す人々」とする - に対してはボール、もっというとデッドボールとなりえるということ。まだまだ今の日本では、こういうアニメ絵を嗜好する人はロリコンでありキモヲタであり現実逃避者であり性的倒錯者であり犯罪予備軍であるとみなされている。そのような変態がかわいがっているキャラを免疫のない人々に無理に広めようとすれば、強い拒絶反応が発生するのは十分考えられる。TBSがしたことは「助長」であり、一般人の中に潜在的拒絶感がまだまだあるのは事実。

現在ニコニコで注目されている作品は、ほぼすべて視聴側がミク愛を持つ(少なくとも拒絶反応がない)/ヲタ・2ちゃん的素養を持つことを前提としている(例外としてオリジナル曲をPV風にまとめている作品もあるがアニメ声に拒否反応を起こす人には不向き、奇跡の海も元歌が、、あとはドラゴンズが倒せない、などあくまでネタ歌唄わせ用として利用しているもの)。殿堂みっくみくにはじまり、ネギ、歌わせてみた、描いてみた、T豚S亀田デストロイネタ、ミク背景オリジナル曲、3D、電子工作、、、、これらは初音ミクというキャラの魅力に立脚しており、その魅力を理解できない人から共感を得ることは難しいし、作る側もそれを求めてはいない。ミクはかわいい−そんな当然のことを感じられない人など、そもそも相手にしていないのだ。わかる人にはわかる。わからんひとに無理にわかってもらおうとは思わん。

もちろん、これは現状では、の話である。上記例外でいくつか示したとおり、高度な調整/映像技術、音楽的感動をもったオリジナルフル曲がもっと現れるかもしれないし、ミク自体のキャラを前面に打ち出すのではなく、何かほかの主テーマを補強する部品の一つとして用いられるかもしれない。社会がヲタク的なものを奇異なものとしてではなく認識し、受け入れるかもしれない、、、ってそれはないか。

初音ミクも、おそらくあと数ヶ月すれば消費されるだろう。妹が新たな消費対象に変わるかもしれない。でも、思いもつかなかった使われ方がなされ、もっともっと広まり、深まるかもしれない。明日には新たな職人が新たな作品を生み出す。願わくば、自分がその一人でありますように。